<鎮海へ>
私達もいよいよ朝鮮の鎮海を基地として機動部隊の索敵に従事することになり、飛行艇を派遣することになった。まず97式大型飛行艇3機使用することになり、我等般若隊にも命が下った。身の回り品、食器その他基地に必要な物資をたくさん積み込み、H君と艇の中へ入っていた。準備に一生懸命になっていたのだが、ふと外を見ると整備員達が大勢、猛烈に防空壕の方へ走って行く。何だろう?と思い、機内より空を見上げると、敵機が地上にある飛行艇を銃撃せんと急降下しているではないか。さあ大変、急いで、しかもあわてて飛行機より飛び出し、猛烈な勢いで防空壕へ飛び込む。壕へ入る直前後ろをチラッと見たら、3機がメラメラと燃え出した。危機一髪とはこのことだ。出発の前で機にはガソリンが満タンになっていたのだ。全く手のつけようもなく、上空に敵機が乱舞していて消火もできず、歯を食いしばりがまんする。機はとうとう飴のようにグニャグニャになり、惨憺たる有様、もったいなくて涙が出る。身の回り品、食器等あとかたもなく燃えてしまった。身の回り品は、後で新品の軍服等もらったが、この銃撃で機と共に水産学校在学中のいろいろの写真・・特に演芸会の小生の女形での出演写真も焼失してしまった。二度と見られぬ世紀の大珍写真だったのに・・残念である。数日後、今度は2式飛行艇で鎮海に無事到着した。私達は格納庫の屋根裏に部屋を作り、そこで寝起きした。そしてまた索敵に従事した。鎮海には予備学生や予科練の整備兵等がいて、我々を見て搭乗員っていいなあ~とうらやましがっていた。