<呉、川西>
詫間基地へ来てからいろいろな場所へ飛んで行った。呉へ行った時は軍港らしく活気に満ちていた。呉の隣りには広工廠がある。軍艦の大砲、ことに戦艦の大砲・・20メートルはあろうか・・今更ながら大きいなあ~と思った。大勢の工員、そして女子挺身隊、学徒動員の生徒達が大砲やその他の兵器を作っていた。
朝と夕方には4列縦隊になり、海軍工廠を出入りしている。我々搭乗員に会うと、歩調取れ!!の合図で女子挺身隊はザックザックと歩調を取り、頭(カシラ)~右・・と敬礼していく。ちょっといい気分である。搭乗員への憧れのまなざし、カッコイ~!!
ここへは飛行機受領に行ったのだが、冬だったのでなかなかエンジンがかからなくて苦労した。毎日翼の上に乗って(エンジンの近くの翼が階段のように降りて、エンジンの点検、整備ができるようになっている)、プロペラを手回ししたり、いろいろな点検をやり、発進準備で忙しかった。また、工廠海辺では、潜水艦に搭載用の小型水偵機が盛んに離着水していた。
また川西航空廠へ飛行機受領に行った時は、一台の飛行艇に二台分の搭乗員を乗せた。川西で降ろし、(受領した機に)乗って帰るのである。ここ川西では女子挺身隊が双発の夜間戦闘機極光を作ったり整備したりしていた。若い挺身隊員が日の丸鉢巻をきりっと結び、一生懸命作業していた。昼休みには職員全員がラジオ体操をやっていた。私達搭乗員は昼食を幹部食堂で空廠長(海軍中将)と一緒にとった。そして中将は私達に、「搭乗員の皆さん御苦労様です」と話しかけられた。初めて見る中将(私が幼い頃、父の海軍在職中の友達の軍医中将が来高し、金谷山の対米館で食事した、その時以来)。私達航空隊司令が大佐だったので、思わず緊張する。中将が隣りで階級の差に関係なくねぎらいの言葉をかけてくれる・・光栄の到りである。
エンジンテストをやった後は空中で射撃下士官が機銃のテスト。バリバリ・・20ミリの発射音、曳光弾・・ダイナミックな感じだ。